刀水歴史全書71 | |
学生反乱 ―1969― 立教大学文学部 松浦高嶺・速水敏彦・高橋 秀著 定価: 本体2800円+税 2005年5月刊 ISBN4-88708-335-1 四六判 281頁 在庫あり |
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1960年代、世界中を巻込んだ大学紛争。当時学生達の要求に「人間存在を懸けて」向合い、且つ果敢に闘った立教大学文学部の教師達。35年後の今「私たちの経験を提示して批判的創造的に継承してほしい」と、この闘いの経過・闘いを支えた理念etc、を本書に! この闘争の歴史は継承されるか? |
【主要目次】 |
第T部 69年立教大学文学部闘争ノート 第1章 日 録 はじめに (1) 発端 (2) 新学期の始まり (3) 異議申し立て (4) 大衆団交 (5) 長引くストライキ (6) 蒔き直し (7) 追い込み 第2章 69年ノート (1) 「チャペル・ニュース」から (2) 同志たち (3) 「松浦先生のもとで」 第3章 新しい大学像を求めて (1) 「6.19文書」に対する教授会新参者たちの応答 (2) 「理念・機構」検討小委員会報告 第U部 紛争の筆頭責任者としての回想 あとがき |
【書 評】 |
No.1 全国40の地方紙に掲載 2006年全国40の地方紙に連載された特集 [夢見たものは今―団塊世代のアイコン] 第5回目(2月4日から13日にかけて)で,この『学生反乱』が大きく紹介されました。 (以下に一部を引用紹介します)。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (前略)・・・ 「あのころ全国で起きた『大学紛争』について、当事者自らがまともに総括した本はほとんど刊行されていない。このままでは風化し,非現実的な『神話』になってしまう」(速水)そんな思いが,三人を再び結び付けた。われわれは学生たちに何を突きつけられたのか? バリケードは何かを変えたのか? と。・・・(略)・・・ 実は「反乱」が起きる前から松浦は「怒れる中年男」だった。・・・ 「教育とは何か」「学問とは何か」と問い掛け,「大学解体」を叫ぶ学生たちに,松浦の怒りが共鳴した。「子弟に対する優遇などに甘んじ,古い体質にどっぷりつかっていたわれわれ教員がだらしない。それを痛烈に反省し,自分たちの名誉を守るためにも,古い体制を解体するしかない」・・・(略)・・・ 明るい笑い声がはじける現在のキャンパスから,バリケードの時代を想像するのは難しい。だが,三十七年前,そこで,人びとのその後の生き方を変えてしまうほどの出来事が起きたのは,事実だ。本の中で高橋はこう書いた。「われわれは老共闘だ。闘いはまだ終わっていない」。岩永は本を読んでこう思った。「先生たちはまだ頑張ってるな,おれたちも自分の場所で頑張らなければ」(敬称略) 文・立花珠樹(共同通信社) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ |
No.2 『歴史学研究』・「史料・文献紹介」 歴史学研究会現代史部会では,2002年度大会で「『1968年』と現代社会」をテーマに,日本・ドイツ・アメリカにおける1968年の社会運動を取り上げた。私もその企画に参加した一人だが,日本について報告してくださる研究者がなかなか見つからず,非常に苦労した記憶がある。 それは,1968年からまだそれほど時間がたっておらず,歴史学の対象たりえていないためであるからだと思われるが,日本人全体が1968年前後の社会変動をこれまで十分直視せず,そこからほとんど教訓を引き出すこともなかったからではないかとも思われる。 現に,1968年前後の日本を揺るがした大学紛争について,当時,紛争に参加した学生だった人々の回想(それも悔恨に満ち溢れたものか自画自賛するものか,両極端なもの)や鎮圧する側だつた警察官の回想が若干出版されているだけで,体系的な資料はほとんど世に出ていないのではないかと思われる。そうした中で,1969年に発生した立教大学文学部闘争について,当時,学生に対処した教師の立場からの資料が比較的安価で発売されたことは注目に値しよう。 立教大学文学部闘争は,1969年の新学期直前に,一般教育部の2名のフランス語担当の教員を文学部フランス文学科に移籍する動議が,文学部教授会で否決されたことが発端である。この決定に学生たちが不審感を抱き,教授会への公開質問から学生たちのストライキヘと発展していく。そして,文学部の教師たちもまた,他学部の教師たちに揶揄されながら,安易に警察力に頼るのではなく,学生たちとの粘り強い交渉によつて,カリキュラムの内容や人事の決定方法などを改善し,ストライキ解除に乗り出していく。 本書は,その過程を教師の目から明らかにしたものであり,第I部では立教大学文学部闘争の経緯とその間に出されたさまざまな文書の解説が,第U部では,文学部長代理としてストライキの収拾に尽力した松浦高嶺氏が戦前から立教大学文学部闘争までの日々を回顧した文章が掲載されている。これを読むと,現在,日本の大学が直面している問題の芽が,この時代から存続しており,学生との対話という路線を選択した立教大学文学部など少数の大学を除いて,当時の大学が抱えていた問題点の多くは,解決されないまま,警察力による弾圧で学生の異議申し立ては押しつぶされてしまつたのではないかと思わせる。たとえば,立教大学文学部闘争の発端になった教員人事を例にとってみても,どれだけの大学で今日,学生のニーズにあった人事の決定がなされているだろうか。 1968〜69年にかけて,日本の大学が抱えていた問題の多くはいまだ解決されていない。不満を抱えた学生たちが爆発する日が近い将来,やって来ないとは誰も断言できないのである。本書は歴史書としてだけでなく,来るベき未来を予見する書としても一読に値する。(岡田-郎) 「史料・文献紹介」 『歴史学研究』(2005年10月号No.806)を転載 |
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